ブロードウェイで3年間のロングランを続けた舞台「ドライビング・ミス・デイジー」は、1987年にピューリッツァー賞を受賞。映画版は1989年にアカデミー賞作品賞をはじめ4部門受賞に輝く名作中の名作。2019年6月から7月にかけて、東京・新宿の紀伊國屋ホールで上演される舞台は”奇跡の80代！”草笛光子と、名優・市村正親の共演。この二人がどんな演技を見せるか、大きな楽しみだ。

伸びる平均余命

2018年7月に厚労省が発表した「平成29年（2017年）簡易生命表」によれば、日本人の平均寿命は過去最高を更新して、男性81.09歳、女性87.26歳に達したそうだ。これは、65歳時点での平均余命が男性で19.57歳、女性で24.43歳を意味しており、驚異的な伸びということになる。その理由として、がんの死亡率が下がっていることが挙げられており、がんはもはや「不治の病ではない」と言ってもよいほど、がんと共存しながら元気に過ごしている方が増えている。

長命より長寿を

高齢化社会の課題は、いかに元気にいきいき生きるか、ということだろう。どんなに長命でも、寝たきりではつまらない。死の間際まで元気に生き続ける健康寿命こそ望ましい。それを実現してこそ“長寿”と言えるのだろう。そのヒーローこそ、男性では三浦雄一郎（1932年10月12日生まれ、86歳）、女性では草笛光子（1933年10月22日生まれ、85歳）ということになろうか。三浦雄一郎は80歳で3度目のエベレスト登頂に成功、先日もアコンカグアの登頂に挑んだことはご存知の通り。草笛光子は今も「舞台で」活躍する現役の女優さん。美しいだけでなく、エネルギッシュな身のこなしに驚かされる。

気の合わないはずの二人が、やがて……

その草笛光子にぴったりと思われる役柄で登場するのが舞台「ドライビング・ミス・デイジー」。モーガン・フリーマンとジェシカ・タンディの映画版でご存知の方も多いことだろう。長年勤めた教職を退いた未亡人のデイジーがある日、車を出そうとして隣の家の庭に突っ込んでしまい、危うく怪我をしそうになる。そこで母の身を案じた息子のブーリーが専用の運転士として雇い入れたのが、初老の黒人ホークだった。厳格なユダヤ人の元教師デイジーと、飄々とした性格で文字が読めないホークとでは気が合うはずもなく、衝突の繰り返し。しかし、やがて黙々と職務に励むホークの人柄に根負けして、ようやく車に乗り込むデイジーだったが……。

年を重ねるだけで人は老いない……

以来、25年の歳月が流れ、その中でホークは初めてニュージャージー州の外を旅し、デイジーは公民権運動を展開するキング牧師の晩餐会に出席するようになる。やがて認知症によって施設で暮らすようになったデイジーだったが、ホークとの友情は、いつまでも変わることなく続くのだった……。この物語は1985年にブロードウィで上演され、舞台でもホーク役はモーガン・フリーマンだった。30年も前に、高齢化社会はすでに大きな関心事だったことが分かる。今回は、できるだけ多くの草笛光子ファンの方々にご応募いただくために、本人のサイン入りの著書『草笛光子のクローゼット』を用意しました。その“奇跡の80代！”の若々しさと美しさ、好奇心旺盛な身のこなしをとくとご堪能ください。「年を重ねるだけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いる」（サミュエル・ウルマン「青春」）ことを実感することでしょう。

●演劇公演「ドライビング・ミス・デイジー」
公演期間：2019年6月22日(土)〜2019年7月15日(月・祝)
会場：紀伊國屋ホール（東京・新宿東口）
チケット料金：9,800円（全席指定・税込）
出演：市村正親 草笛光子 堀部圭亮
演出：森 新太郎
作：アルフレッド・ウーリー