クロマニョン人が残した洞窟壁画 特別展「世界遺産 ラスコー展」 国立科学博物館のペア入場券を5組10名様にプレゼント

2メートルの巨大な「黒い牝ウシ」が実物大で再現されている。 © SPL Lascaux international exhibition

2メートルの巨大な「黒い牝ウシ」が実物大で再現されている。
© SPL Lascaux international exhibition

ヒトはどのようにして現在のような「人間」になったのだろうか。約2万年前の氷河期に描かれたラスコーの洞窟壁画は、人類がいかに豊かな創造性を獲得していたか、洞窟の様子とともに、彼らの芸術的なセンスを体感することができる。

3次元レーザースキャンなどの現代の最新技術とアーティストの手作業で精密に復元された迫力満点の壁画が実物大でよみがえる。 © SPL Lascaux international exhibition

3次元レーザースキャンなどの現代の最新技術とアーティストの手作業で精密に復元された迫力満点の壁画が実物大でよみがえる。
© SPL Lascaux international exhibition

40億年の生命の歴史

原始地球が誕生したのは、太陽系が誕生したのと同じ今から約46億年前とされている。やがて海が生まれ、そこで生命体が産声を上げたのが40億年ほど前。磁気圏ができて太陽風から地球を守れるようになり、さらにオゾン層によって安心して海から陸に上がれるようになったのは5億年ほど前のこと。哺乳類の時代になるのは、今から約6,500万年ほど前のこととされている。

フランス南部にあるラスコーの洞窟は風化を防ぐため現在は非公開。特別展ではフランス政府公認のもとで再現された実物大の洞窟壁画が展示される。 © SPL Lascaux international exhibition

フランス南部にあるラスコーの洞窟は風化を防ぐため現在は非公開。特別展ではフランス政府公認のもとで再現された実物大の洞窟壁画が展示される。
© SPL Lascaux international exhibition

猿人からヒトへ

ロビン・ダンバー著「人類進化の謎を解き明かす」(インターシフト刊)によれば、ヒト(大型類人猿)は中央アフリカ地域で「約600万年前にチンパンジーと別れた」もので、当時はまだ樹上生活をしていたという。

隠れた線刻がライトで浮かび上がるように構成された壁画展示。 © SPL Lascaux international exhibition

隠れた線刻がライトで浮かび上がるように構成された壁画展示。
© SPL Lascaux international exhibition

ラスコー洞窟で最も深い位置、深さ5メートルのたて穴に描かれた壁画「井戸の場面」。槍が刺さって腸がはみ出しているバイソン(右)。1ミリ以下の精度で、洞窟の状態まで再現されている。 © SPL Lascaux international exhibition

ラスコー洞窟で最も深い位置、深さ5メートルのたて穴に描かれた壁画「井戸の場面」。槍が刺さって腸がはみ出しているバイソン(右)。1ミリ以下の精度で、洞窟の状態まで再現されている。
© SPL Lascaux international exhibition

ホモ・サピエンスの誕生

現代の我々に最も近いホモ・サピエンス(解剖学的現生人類)が誕生するのは約20万年前で、彼らは5万年ほど前にアフリカから移動(出アフリカ)してユーラシア大陸へ向かい、世界中へ拡散していく。今回のラスコーの壁画を描いたクロマニョン人もまたホモ・サピエンスであり、現在のスペインからフランスにかけて広く分布していたという。

映像シアターで再現されるラスコー壁画「牡牛の広間」。 © SPL Lascaux international exhibition

映像シアターで再現されるラスコー壁画「牡牛の広間」。
© SPL Lascaux international exhibition

クロマニョン人の復元模型。約2万年前の氷河期に、ヒトはすでに骨製の縫い針で服を作り、投げ槍で狩をし、火を使って料理をしていた。装飾品もかなり手の込んだものが多く、デザインセンスの高さが伺える。 © SPL Lascaux international exhibition

クロマニョン人の復元模型。約2万年前の氷河期に、ヒトはすでに骨製の縫い針で服を作り、投げ槍で狩をし、火を使って料理をしていた。装飾品もかなり手の込んだものが多く、デザインセンスの高さが伺える。
© SPL Lascaux international exhibition

芸術、ここに始まる

今回のラスコー展では、そうした人類の最も近しい祖先の作品を間近に見ることができる。それも、フランス南西部の現地へ行っても非公開のため見られないラスコーの洞窟壁画を、ほぼ原寸大で見ることができるまたとない機会である。恐らく、現地で見るよりもはるかに良好な環境で洞窟壁画の最高傑作を見ることができるだろう。それは、人類にとっての芸術の始まりであり、遊びの場であり、祈るための聖地だったかもしれない。2万年という時間距離は、40億年の生命の歴史からすれば、つい昨日のような短さである。

<ラスコーのランプ> 人類は100万年以上前から火を使っていたと考えられているが、灯りとしての火を持ち運んだ物的証拠はクロマニョン人のものが最古。石製で、丁寧につくり込まれている。 ラスコー洞窟遺跡(フランス)出土、約2万年前、赤色砂岩製。 フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵 [フランス国立先史博物館(レゼジー)寄託] Photo © RMN-Grand Palais (use d’Archéologie nationale) / Franck Raux

<ラスコーのランプ> 人類は100万年以上前から火を使っていたと考えられているが、灯りとしての火を持ち運んだ物的証拠はクロマニョン人のものが最古。石製で、丁寧につくり込まれている。
ラスコー洞窟遺跡(フランス)出土、約2万年前、赤色砂岩製。
フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵 [フランス国立先史博物館(レゼジー)寄託]
Photo © RMN-Grand Palais (use d’Archéologie nationale) / Franck Raux

<体をなめるバイソン> 動物のしぐさがみてとれる自然主義的な作品。長い毛、細かな毛などの毛並みが巧みに表現され、小さな耳、大きな目、鼻や口が繊細な線で刻まれている。素材はトナカイの角。 ラ・マドレーヌ岩陰遺跡(フランス)出土。マドレーヌ文化(約2万年から1万4,500年前)、トナカイ角製。 フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵 [フランス国立先史博物館(レゼジー)寄託] Photo © RMN-Grand Palais (musée de la Préhistoire des Eyzies) / René-Gabriel Ojéda

<体をなめるバイソン> 動物のしぐさがみてとれる自然主義的な作品。長い毛、細かな毛などの毛並みが巧みに表現され、小さな耳、大きな目、鼻や口が繊細な線で刻まれている。素材はトナカイの角。
ラ・マドレーヌ岩陰遺跡(フランス)出土。マドレーヌ文化(約2万年から1万4,500年前)、トナカイ角製。
フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵 [フランス国立先史博物館(レゼジー)寄託]
Photo © RMN-Grand Palais (musée de la Préhistoire des Eyzies) / René-Gabriel Ojéda

時間的に余裕のある暮らし

ラスコーの洞窟壁画に描かれているモチーフは、動物が圧倒的に多い。どれも威厳に満ちていて、生命力にあふれた豊かなボリュームで描かれている。これらの動物たちは狩りの対象だったはずだが、むしろ畏敬の念をもって描かれているように見える。きっと狩りのできない雨の日にでも、気高い野生の動物たちに思いを馳せながら、さまざまな道具と技法を駆使して壁画に取り組んだのではなかろうか。洞窟の中は安全で暖かくて灯りがあり、恐らくたっぷり時間をかけて丁寧に描いたに違いない。もしかしたら、現代のわれわれよりもはるかにゆったりとした「時間的に余裕のある暮らし」をしていたのかもしれない。だとすると、私たちは果たして進化しているのか、いないのか……。

<ヴィーナス> 丸みのある成熟した女性を表した旧石器時代ヴィーナスの一つ。この時期にヨーロッパ各地で、このような胸や尻が大きく誇張された女性像が制作されていた。 グリマルディ洞窟遺跡(イタリア)出土、グラヴェット文化(約3万4,000年から2万5,000年前)、褐色の凍石製。 Photo © RMN-Grand Palais (musée d'Archéologie nationale) / Jean-Gilles Berizzi

<ヴィーナス> 丸みのある成熟した女性を表した旧石器時代ヴィーナスの一つ。この時期にヨーロッパ各地で、このような胸や尻が大きく誇張された女性像が制作されていた。
グリマルディ洞窟遺跡(イタリア)出土、グラヴェット文化(約3万4,000年から2万5,000年前)、褐色の凍石製。
Photo © RMN-Grand Palais (musée d’Archéologie nationale) / Jean-Gilles Berizzi

<クロマニョン人頭骨> 複製標本 国立科学博物館所蔵 ラスコー洞窟から10キロメートルほどのクロマニョン岩陰で1868年に発見された男性の頭骨。クロマニョン人という名の元になっている。

<クロマニョン人頭骨> 複製標本 国立科学博物館所蔵
ラスコー洞窟から10キロメートルほどのクロマニョン岩陰で1868年に発見された男性の頭骨。クロマニョン人という名の元になっている。

●特別展「世界遺産 ラスコー展 〜クロマニョン人が残した洞窟壁画〜」開催概要
会 期:2016年11月1日(火)〜2017年2月19日(日)
会 場:国立科学博物館(東京・上野公園)
開館時間:午前9時〜午後5時(金曜日は午後8時まで)※入館は各閉館時間の30分前まで
休館日:毎週月曜日、12月28日(水)〜1月1日(日)、1月10日(火)※ただし12月26日(月)、1月2日(月)、1月9日(月)、2月13日(月)の各月曜日は開館
●展覧会への問い合わせ
Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:http://lascaux2016.jp/
●読者プレゼントのお知らせ
エントリー期間中、セゾンカード・UCカードを1,000円(税込)以上ご利用いただいた方で、読者プレゼントにご応募いただいた方の中から抽選で5組10名様に国立科学博物館で開催される特別展「世界遺産 ラスコー展 〜クロマニョン人が残した洞窟壁画〜」のペアチケットをプレゼントいたします。
※当選者の発表は、賞品の発送(2016年11月中)をもってかえさせていただきます。
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12.ラスコー展チラシ
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