臨済禅師1150年・白隠禅師250年遠諱(おんき)記念 特別展「禅―心をかたちに―」 東京国立博物館で開催される東京展のペア入場券を5組10名様にプレゼント
「禅とは何か?」と問われても、答えるのは簡単ではない。それは禅宗が特定の経典によらず、師から弟子へ直接、伝えられてきたからではなかろうか。それも文字だけでなく、言葉さえも使わず、ひたすら座禅をしながら、自ら心の内を探って「自分の心の中の仏性を見出す」行為は、まさに修行そのもの。そこに多くの外国人は宗教というより「思想性や芸術性」を見出し、ライフスタイルとしての「ZEN」に魅力を感じているのかもしれない。
インドから中国に伝来
禅宗は約1,500年前、インドの達磨大師によって中国に伝えられた仏教の宗派。中国では臨済宗の宗祖・臨済義玄禅師によって広められ、今日の臨済宗と黄檗宗につながっている。
鎌倉時代から盛んに
禅宗が本格的にわが国にもたらされたのは、鎌倉時代に入ってから。日本人僧の中国への留学や、中国からの高僧の招聘が頻繁に行われ、この時期から禅宗の導入が積極的に行われるようになっている。
自分の心と向き合う
禅宗は「不立文字(ふりゅうもんじ)(言葉や文字によらず)」「教外別伝(きょうげつべつでん)(経典によることもなく)」「直指人心(じきしにんしん)(師と弟子の直接的な関わりのなかで自分自身の心そのものをつかみ出し)」「見性成仏(けんしょうじょうぶつ)(自分の心のなかの仏性を見出して)」直感的な悟りへの境地へ至ることを大きな特徴としている。そのため、生身の祖師・先師たちの人間味あふれる姿を「かたち」として遺し、現代に伝えている。禅がアートと結びつきやすいのも、そうした心が「かたち」になっているからでもあろう。
心を反映したZEN Art
禅宗は、もっぱら座禅を通して自分の心と向き合うと同時に、日常の衣食住遊のすべての行為を修行とみなす。そのため、立ち居振る舞いの美しさだけでなく、自然に審美眼を養うことにもなる。美しいものを見極めるためには、心が澄んでいなければならないからである。最近はZEN Art の世界で写真の重要性が増しているが、禅の心を反映した禅的な写真は、一つのジャンルにまでなっている。
50年に一度だから「遠諱(おんき)」
今回の「禅—心をかたちに—」展は、臨済禅師1150年、白隠禅師250年遠諱(おんき)を記念してのものである。一般に故人の冥福を祈る法要は一周忌とか七回忌のように「遠忌」で表現されるが、50回忌を過ぎたときは50年ごとの法要となるため「遠諱(おんき)」と表現される。臨済宗の宗祖・臨済禅師の法要と、わが国の臨済宗中興の祖・白隠禅師の法要が、50年に一度という節目に重なったわけで、一生のうちにそう何度も巡り会うことではない。
臨済宗の末寺6,000ヵ寺
そのため今回の展覧会には、臨済宗14派と黄檗宗を合わせて15派の本山が総出で協力している。建仁寺(京都)、建長寺(鎌倉)、円覚寺(鎌倉)、南禅寺(京都)、大徳寺(京都)、天龍寺(京都)といった名刹は一般にもよく知られているが、今回はこうした著名なお寺以外からも多くの美術品が寄せられており、その数国宝22件、重要文化財102件という豪華さ。まさに、禅の名宝が集結した感がある。臨済宗は全国に約6,000カ寺を超える末寺があるというが、関係者ならずとも大いに関心をそそる。
関連イベントも盛りだくさん
禅は実践を尊ぶ思想なだけに、ただ「見た」だけではなかなか理解したことにはならない。そこで、記念講演会やトークイベント、尺八コンサート、禅寺の四ツ頭茶礼、禅トーク、写禅語など、関連イベントも盛りだくさんに用意されている。また、東京展の会期に合わせて、建長寺と円覚寺を舞台に「The Zen 鎌倉大座禅会」も開催される。この機会に、心静かに、自分と向き合ってみるのも悪くなさそうだ。
禅は苦悩を発する心を救う
禅の世界は意外に身近に存在する。食の作法は禅によるところが大きいし、精進料理の一つ「けんちん汁」は建長寺が発祥とされ「けんちょう汁」がなまったものとか。禅語の「看脚下(かんきゃっか)」という言葉も、足元をよく見て、自分の生き方を反省せよということのようで、自然と脱いだ履物などをきちんと揃えるようになる。若い頃、ニューヨークのウッドストックにあるアメリカ人の禅寺に1週間ほど参禅したことがあるが、老師に「脚が痛くなる」と愚痴ったら、たちまち「No Pain、No Gain!」と一喝された。老師の体験から発した真心に接して、かえって気持ちがシャキッとした。
禅と茶の湯
戦国の武将が禅に傾倒したのには理由がありそうだ。それは、同じ戦うにしても、そこに「大義」を見出せなければ盗賊と少しも変わらなかったからだ。それでは末代までの恥となる。己の心と向き合い、大義のために殉じるのでなければ戦に意味はない。禅は、そうしたことを考えさせるのに役立ったはずだ。その禅は、茶の湯の流行にも深く関わっていた。茶の湯は、心を静める一助になったからだろう。
会 期:2016年10月18日〜11月27日(日)
会 場:東京国立博物館 平成館(東京・上野公園)
開館時間:午前9時30分〜午後5時 ※金曜日と10月22日(土)、11月3日(木・祝)、5日(土)は午後8時まで
休館日:月曜日
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