国立新美術館 開館10周年 安藤忠雄展—挑戦— 国立新美術館 ペア鑑賞券を5組10名様にプレゼント
わが国を代表する建築家の一人、安藤忠雄氏は、今や「世界のANDO」として世界各地にその作品が点在している。そして、そこには常に枕詞のように「プロボクサー出身で、独学で建築を学ぶ」という解説がつけられる。それは在野というより、もはやアカデミズムを突き抜けた存在であるかのようだ。稀代の建築家・安藤忠雄はどのように生まれ、どのように世界に飛翔していったのか、その全貌に迫る東京で初めての大規模展覧会である。
プロボクサー安藤忠雄
世界的な建築家・安藤忠雄は1941年大阪の生まれ。高校2年生の時にプロボクサーのライセンスを取得、海外でも戦っている。ところが、あるときジムにファイティング原田が訪ねてきたそうだ。その原田の練習風景を目の当たりにして「プロでのし上がっていくには才能が必要なのだと痛烈に思い知らされた私は、ボクサーの道をすっぱりとあきらめた」(『安藤忠雄 仕事をつくる—私の履歴書』日本経済新聞出版社)という。「挑戦」は、この頃からすでに始まっていたわけだ。
出世作「住吉の長屋」
その後、建築設計事務所でアルバイトをしながら独学で建築を学び、一級建築士の資格を取得。1969年、大阪に安藤忠雄建築研究所を設立、主に個人住宅を手がけはじめる。一躍、脚光を浴びるようになったのは、1979年に日本建築学会賞を受賞した「住吉の長屋」からだろう。これは、長屋を造ったのではなく、3軒長屋の真ん中の家を切り取り、そこに新たに2階建のコンクリートの家を挿入したもの。「建築家より、頑張っている住み手の勇気に賞を与えるべきだ」と言われたほど、日常の暮らしには不便なものだった。
それでも「自然」は必要
「住吉の長屋」の図面を見ると、2階の寝室から1階のトイレに行くのに、吹き抜けの中庭を通らなければならない。そうなると、雨の日には傘が必要になる。確かに便利とは言い難いが、しかし、考えようによっては「ただそれだけのこと」とも言える。建築家・安藤忠雄は、間口3.3m×奥行き14.1mのわずかな空間に、それでも人の暮らしには、太陽の光や雨・風・雲、ときには鳥のさえずりなども感じられる「自然の光」を取り込むことが大切だと感じたのだろう。その家には今も、「勇気ある住み手」が気に入って住み続けているそうだ。
孤高と温かさと
安藤忠雄氏を初めてお見かけしたのは1988年、北海道トマムの「水の教会」だった。教会の控え室に通じる弧を描く扉の開閉具合などを丹念に確かめ、水面に屹立する十字架を屋内からじっくり眺めたあと、関係者に二言三言、何ごとかを告げると足早に立ち去った。「水の教会」は、水辺に面した扉を開け放つと、十字架とともに自然と対峙する位置に身を置くことになり、それは息を呑むような美しさだった。とりわけ、雪の降り積もった冬の「水の教会」は、まさに孤高といった厳しさと、その中にあって、それでもなお人々を温かく見守るといったぬくもりを感じさせた。
人を魅了する力
その後も何度か大阪の事務所にお邪魔してお話を聞く機会をいただき、コートダジュールやモナコの建築について現地で解説していただいたりしたが、建築作品もさることながら、その人柄にすっかり魅了されてしまった。建築は、建築家が一人で好き勝手に造るわけではない。そこには必ず「施主」 がいる。施主に気に入ってもらわなければ始まらないのだ。この人には確かに、施主に「この人にこそ」と思わせる魅力がある。目の輝き、熱っぽさ、合理性、自信、語り口、美意識、心の温かさ、優しさと清潔感、潔さなどがない混ぜになって「ぜひこの人に頼みたい」と思わせる魅力があふれている。全力疾走している人には、人を魅了する力がある。
予算不足に打ち勝つ
とはいえ、どの施主も潤沢に予算を用意できるわけではない。だからといって、建築家・安藤忠雄は無下に断るようなことはしない。大阪府茨木市に建つ「光の教会」は、限られた敷地に限られた予算で建てられた奇跡のような施設だ。安藤氏のご紹介で「光の教会」を見せていただいたことがあるが、驚いたことに、緩やかなスロープになった礼拝堂の下の方に説教台が位置している。つまり、牧師さんは信者さんを見上げることになるのだ。床は、黒のオイルステインが施された安価な杉の足場板とか。正面の十字のスリットから漏れる光が、小さな暗い空間を無限の大きさに広げていた。
「光の教会」を原寸大で再現
今回の「安藤忠雄展—挑戦—」では、会場の野外展示場に、この「光の教会」が原寸大で再現される。しかも、もともと安藤忠雄氏がやりたかった十字架にガラスを入れない状態での再現という。さて、どうなることだろう。さらに、安藤忠雄氏の大阪の仕事場をそのまま再現した空間も展示される。また、これまでに設計した住宅100点以上を模型や写真などで一挙公開、未発表作品を含め、展示物の80%以上が国内初出展という。
会場でお目にかかれるかも
期間中には、表参道ヒルズ(表参道)をはじめ、東京大学情報学環・福武ホール(本郷)や国際子ども図書館(上野)など、都内各地にある安藤忠雄建築をめぐるスタンプラリーも実施される。会場でのギャラリートークは「若い人たちと話をしたい」ということで、本人によれば「1日に3回くらい、全部で30回くらいはやりたい」ということなので、運がよければ本人の魅力を間近で感じることができるかもしれない。
会 期:2017年9月27日(水)〜12月18日(月)
会 場:国立新美術館 企画展示室1E+野外展示場(東京・六本木)
開館時間:10:00〜18:00 ※金曜日・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜日
観覧料:一般1,500円(1,300円)、大学生1,200円(1,000円)、高校生800円(600円) ※( )内は前売および各20名以上の団体料金 ※中学生以下および障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料
エントリー期間中、セゾンカード・UCカードを1,000円(税込)以上ご利用のうえエントリーいただいた方の中から抽選で5組10名様に、国立新美術館「安藤忠雄展—挑戦—」のペア鑑賞券をプレゼントいたします。エントリー期間:2017年6月16日(金)〜2017年7月25日(火)
※当選者の発表は、賞品の発送(2017年8月中)をもってかえさせていただきます。
エントリーキーワード/挑戦
エントリーはこちら