いきいきとした花柄が目を惹く財布は、イタリア語で“花売り娘”を意味する「FIORAIA（フィオライア）」。切り絵のような繊細な花柄のパッチワークと、女性にとって使いやすいデザインが大きな特徴。よく考え抜かれた使い勝手の良さは、女性の所作まで美しく見せてくれる。

女性の財布を考える

「FIORAIA」は2015年9月に、デザイナーの鈴木 綾さんが立ち上げたばかりの新しいブランド。その背景には、女性にとって使いやすい財布とはどのようなものかという、根本的な問いかけがある。

「以前はOLをしていたのですが、ものを作るのが好きで、改めてデザイン学校に入り直しました。卒業していくつかのメーカーでデザイナーとして働きましたが、企業の中でものづくりをするのに限界を感じたのです。たとえば、女性はお金だけでなく、大切な人にいただいたお守りや手紙、おみくじなど、さまざまなものを財布にしまいます。持つ人の思いがこもったものを大事にしまっておける場所、それが女性にとっての財布なのではないかと、そんなことを考えながらデザインしています」と鈴木さん。

機能的なものは美しい

ジッパータイプの長財布には、カード段とは別に、サイズ違いのものを何でも入れておけるポケットが用意されている。そこにはレシートや写真、少しサイズの大きいカードなども入れられる。メインの仕切りには3つのカード段があり、ここにはキャッシュカードやクレジットカードなどがしまえる。やや深めのカード段は、カードが見えるのを防いでくれる。「よく使うカードは取り出しやすい場所にしまいたいけど、見えるのは心配」と、いかにも女性らしい配慮。

お札をしまう仕切りを深めにして、お札が見えるのを防ぐ。中央の小銭入れはメインのチャックを開ければすぐに取り出せるようになっており、仕切りの高さを工夫してあるので、小銭が飛び散ることもない。重宝するのが外側の別室。かさばらない程度にマチがつけてあり、ピアスや指輪などの小物を簡単にしまえる。「できるだけパーツを少なくして財布を軽くし、しかも効率よく取り出せて中身は見えないようにする」と鈴木さん。確かに、機能的なものは美しい。

細部まで考え抜かれたデザイン。

発想をカタチにする難しさ

長財布を開けると、小銭入れがクチバシのように大きく開く。そのため、小銭からお札、カードまで、一度に財布の中を見渡すことができる。折り紙のように複雑に開閉するこの仕掛けは意匠登録済みで、鈴木さん独自のアイデア。

「こぶしが入るぐらいパカっと開く小銭入れが欲しくて、いろいろと考えた末にたどり着いたのがこの仕掛けです。滑り止めのベロも加えました。この構造によって空いたスペースが無駄にならないように、片側対角線上にマチを入れたので見た目もすっきりしました」と出来栄えに自信をのぞかせる。財布を“開く”作業がぐんと省略されたので、全体にとても使いやすい。

女性にも本格的なミニ財布を

流行のミニ財布は、小銭とカード、お札がすっきりと入る手の平サイズ。女性用にも小ぶりなサイズの財布はあるものの三つ折りのタイプが多く、お札が美しくしまえないと感じていたそうです。
「小さな財布が女性の間でも流行しているのは、小さなバッグを持つ女性が増えているからだと思います。荷物の少ない軽快な雰囲気は素敵ですが、長財布だと選べるバッグが限られてしまう。結婚式などでクラッチバッグを使うときにも、必要なお金とカードだけを入れてやり過ごすというのも味気ないと感じていました。男性用にはコンパクトな財布が充実しているのに、女性用のミニ財布では二つ折りだと中途半端に大きく、小ぶりで使い勝手のいい小さな財布がなかなか見当たらないので、自分で作ろうと思いました」と鈴木さん。女性の手にも収まる絶妙なサイズ感でありながら、使いやすさを追求したという。

コンパクトなサイズながら、一万円札までしっかり収納できる。